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商人としての子貢

  • tsts0714
  • 2015年8月17日
  • 読了時間: 2分

 子貢が商人であることを重要視してその思想を考えた佐藤一郎氏の論文を簡単にまとめました。面白そうなところだけを抜書きした形になったので少々読みにくいです。論文自体はこちらから誰でも無料で読めますので、ご興味の方は本文をどうぞ。

 佐藤氏は子貢を「「真正の新興階級」である商人の思想家である」(5頁)として、子貢は才能を商品と考え、その価値を量的・相対的に論じたのだと主張します。顔回を十として自分を二とする箇所は、数量化して比する典型的な例です。

 人物評価を好むことは孔子と子貢に共通の特徴だとしながら、孔子はその評価を質的に行い本質を捉え言い表そうとしており(絶対的批評)、対して子貢はその才能を数量化した上で相対的評価をしていると指摘しています。そして「子貢、人を方す。」の箇所も、「方す」とは比較するという意味であるので、孔子は子貢の人物批評それ自体を咎めて皮肉を言ったのではなく、そのやり方、比べるという評価方法を非難したのだといいます。

 子貢が商人であることを考えると理解がしやすい箇所に、名と実が一致しないことを嫌う場面と、孔子に国を治めることの最重要を信頼であると説かれる場面を挙げています。名実の不一致は商業上の不正であるので当然子貢は嫌がるでしょうし、商人同士は信頼に基づいて商売をしますから、その考えを国にも用いれば子貢にもよくわかると孔子は考えたのでしょう。

 子貢のこうした相対的に、数量で以て人々を評価する姿勢は、つまり人々を同質に見ていることからくるものです。質の異なるものはいくら数量化したところで比較できません。ここに「子貢の思想に階級にとらわれず、宗族を超えて人間一般にむかおうとする若々しい意欲を感じうる」(33頁)と佐藤氏は言います。

「子貢が当時の階級制度を、新興の商人の意気にもえて、のりこえようとするのに対し、その方法を否定する孔子は、正に当時の階級制度を擁護しているのである。」(37頁)

参考文献)「論語における子貢の研究――古代哲学の成立と商業的思惟――」佐藤一郎 『北海道大学文学部紀要 14』  

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